休眠担保権

 休眠担保権とは、長期間放置された担保権(抵当権等)の登記のことをいいます。

 

 登記簿には明治・大正時代に債権額を5円として登記されているものがあります。

 

 この休眠担保権は、被担保債権が既に完済されて、消滅しているか、もしくは時効を主張することで消滅させることが可能です。

 

 なぜ、このようなことになるのかと申しますと、抵当権等の担保権は消滅しても登記簿からは当然に削除されるわけではありません。登記は申請をすることで抹消されるからです。

 

 この休眠担保権の抹消は、先祖代々の土地に家を建築する、建替をするときに、金融機関から借入の手続きをする際に気づかれて、手続きの依頼をされることが多いです。なぜなら、金融機関は、登記が事実上無意味なものであっても、この登記が存在する限り敬遠し、融資の支障となることがあるためです。

休眠担保権の抹消

担保権者(債権者が行方不明の場合)

 担保権者が行方不明の場合の方法が、いくつかありますが、実務上よく用いられている「弁済供託による休眠担保権抹消」の解説をします。

 なぜ実務上、よく用いられているのかと申しますと、他の休眠担保権抹消登記手続に比較し、必要書面が少ない点と裁判所を利用せずにすむ点があげられます。

要件

 この手続を利用するには、以下の要件を満たす必要があります。

 

・担保権者等が行方不明であること

・被担保債権の弁済期から20年を経過していること

・債権・利息・遅延損害金の全額を供託すること

・対象となる担保権登記は、「先取特権・(根)質権・(根)抵当権・これらの権利の処分」に関する登記・仮登記です。

 

その方法

 その具体的な方法ですが、担保権者の登記簿上の住所地の供託所に、被担保債権、弁済期日から供託日までの利息・遅延損害金の全額を弁済供託します。

 

 弁済供託後、法務局に休眠担保権抹消登記を申請します。

 

 明治時代に設定された抵当権の場合、供託日までの利息・遅延損害金が100年を超すこともありますが、そもそもの債権額が少ないため、利息・遅延損害金について1000円にも満たないことがほとんどです。

 

 ※債権額につき現在の貨幣価値で考える必要はありません。